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この度は、地震によって被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
ストレスが多い被災生活を送る中で、ペット飼育者にとって家族同然のペットの安全・安心確保は非常に難しい問題かと思います。特に、住まいを変えなければいけない状況下、新たな地域や人間関係の中でペットを飼育していくには様々な課題が生じる可能性も考えられます。例えば熊本地震では、仮設住宅でペット飼育が認められたものの、ペットのにおいや鳴き声、マナーが問題となるケースがありました(1)。また災害公営住宅では、ペット飼育を認めるかどうかで自治体間で議論が紛糾したという事例も報告されています。公営住宅の一つとなる災害公営住宅では、公営住宅法上規定はされていないものの、原則、ペット飼育が禁止されているからです(2)。
そうした中、災害公営住宅でもペット飼育が可能になる動きも見られます。先の熊本地震の被災地においても、熊本市長が仮設住宅訪問の際、被災者からペットの同居を要望する声が多かったことを受け、震災前に飼っていたペットに限り災害公営住宅への入居を認める方針を打ち出しました(3)。益城、美里、大津3町についても同様の対応がなされています(4)。このように、熊本地震の例からは、被災地におけるペットの安心・安全確保は、今では災害後の重要なテーマの一つとして認識されてきているだけでなく、被災者の方々の粘り強い要望は既存の制度を変えられることが示されています。
また、地域の動物愛護に関わる団体の重要性も高まっています。熊本地震では熊本県・熊本市・県獣医師会が「熊本地震ペット救護本部」を立ち上げ、ペットの医療体制を整備したほか、被災者からのペット一時預かりの要望を受け、大分県九重町にペット受け入れ施設「熊本地震ペット救援センター」を設立しました(5)。この他にも、ボランティア団体が、飼い主に代わって避難所で暮らせないペットの預かりや散歩を行うといった事例も見受けられました(6)。つまり、被災生活が落ち着くまでは、こうした団体のサービスを活用していくことも有効と思われます。
災害大国となった日本では、災害に対して平時からの備えがより一層重要になってきていることが指摘されています。ペット飼育者に関して言えば、日頃から地元の動物愛護団体等との信頼関係の構築が大切でしょう。そうすることで、災害によって一定期間ペットと過ごすことが困難になったとしても、信頼できる相手にペットを託すことで、ペット飼育者のみならずペット自身もストレスを感じることなく離れ離れの生活を送ることが可能になると考えられます。もちろんそうした団体の方々も被災する可能性がありますので、日常から複数の団体と交流しておくことも重要かと思います。
最後に、ペット飼育者の方々が以前のようにペットと楽しく過ごせる日々が一日も早く訪れますことを心より祈念致します。
京都産業大学 非常勤講師
稲見直子
(1)Docdog編集部, 2017,「熊本地震の被災者として、飼い主として、動物との共生社会を考える」Docdog Magazine, 2017年4月12日,（2019年9月12日取得, https://www.docdog.jp/2017/04/magazine-bousai-kumamoto01.html）.
(2)西日本新聞, 2018,「ペット可否に自治体で差 熊本地震の災害公営住宅入居 飼育容認は３町のみ」, 2018年1月4日（2019年9月12日取得, （https://www.nishinippon.co.jp/item/n/384070/）.
(3)西日本新聞, 2018,「ペット可否に自治体で差 熊本地震の災害公営住宅入居 飼育容認は３町のみ」, 2018年4月26日（2019年10月25日取得, （https://www.nishinippon.co.jp/item/n/411521/）.
(4)西日本新聞, 2018,「ペット可否に自治体で差 熊本地震の災害公営住宅入居 飼育容認は３町のみ」, 2018年1月4日（2019年9月12日取得, （https://www.nishinippon.co.jp/item/n/384070/）.
(5)（一財）ペット災害対策推進協会,「熊本地震ペット救護本部」,（2019年10月25日取得, http://doubutsukyuen-search.org/kumamoto/）.
(6)西日本新聞, 2018,「ペット可否に自治体で差 熊本地震の災害公営住宅入居 飼育容認は３町のみ」, 2018年1月4日（2019年9月12日取得, （https://www.nishinippon.co.jp/item/n/384070/）.
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